レビュー:「異世界おじさん 2巻」VTuberに恋愛相談にツッコミしかない異世界生活の回想、そして幾多もちりばめられたSEGAへの愛

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異世界おじさん 2巻

今の時代、娯楽に満ちあふれた時代とも言えます。スマホ一台あれば、ゲームや漫画、小説、映画、動画鑑賞までできてしまう。そういった中で、子供の頃から好きな趣味を貫き通すというのは、ある意味“すごい事”とも言えると思うのです。趣味、大切にしましょう。……例えそれがマイノリティだったとしても……です。

なんだかんだと時代の最先端を取り込んでいるバーチャルエルフユーチューバー

異世界から舞い戻った“おじさん”が選んだ職業は、YouTuber。基本的には異世界で覚えた魔法でアレコレするタイプの動画をアップして日銭を稼いでいるのだが、同居している甥っ子“たかふみ”の幼馴染みである“藤宮”さんの恋愛相談に半ば強引に乗るため、禁断の魔法でツンデレエルフへと変身。

そんな変身したおじさんを見た“たかふみ”は、おじさんと藤宮の恋愛相談はさておいてYouTube撮影をしようと提案。“藤宮”を放置して撮影なんて乗り気じゃないおじさんに、セガサターンの“ガーディアンヒーローズ”のプレイ動画にしよう、とこれまたどう見てもセガサターンファンなら大半の人が喜びそうな提案をし了承させる。ほんと、ガーディアンヒーローズでおじさんを釣るなんて“たかふみ”はおじさんの扱いがわかってきたなぁ、などと成長に涙を禁じ得ない瞬間だ。

その後動画は無事できあがるが、アップロードされた動画はプレイ動画ではなくガーディアンヒーローズをプレイするエルフを映しただけの動画。まさかの“バーチャルエルフユーチューバー”爆誕である。そして“たかふみ”は声高らかに叫ぶ。「今はやっぱり糞むさいおっさんよりバーチャルユーチューバー……美少女アバターの時代だよ!!」(2巻:50ページより引用)と。……まぁ、その、なんだ。うん、残念ながら真理だと思う。

気づけばヒロインな藤宮さんは子供時代がアレだったけど、“たかふみ”は男前だった

話を少し戻して、おじさんは“たかふみ”の幼馴染みで“たかふみ”に恋い焦がれる“藤宮”をもてなすため、初めて“たかふみ”が“藤宮”と出会った頃の記憶を投影する。しかし、映し出されたのは小汚いガキだった。そして“たかふみ”は言う。これこそ、“藤宮”だと。

こりゃあだめだ、と冷静なおじさんのツッコミに、羞恥心の余り映像を消そうと慌てる”藤宮”。おじさんに、再会した時よくわかったな、と問われた“たかふみ”の答えは、“藤宮だもんな”と男前の回答。藤宮の恋心にはまったく気づいていないながらに、友情だけはしっかりとある事を見せつけてくれる“たかふみ”はさりげなくカッコイイ。……まぁ、おじさんとの日常は本当にアレだけど。

一方異世界話は……SEGAのゲームは人生の役に立つ?

2巻の異世界話も1巻同様に、どうみてもおじさんに惚れているであろうツンデレエルフや、おじさんが無理矢理“魔炎竜”を倒したおかげで引きこもりたいのに引きこもれなくなった凍神剣の護り手メイベルらが色んな意味で酷い目に遭う。が、やはり今回読んでいて一番グッときたのは、“SEGAのゲームは人生の役に立つ”というストーリー。

「青春をかけないとエイリアンソルジャーのスーパーハードはクリアできない」とおじさんに聞かされ微妙に思っていた“たかふみ”だが、おじさんはゲームをしていたからこそ異世界で助かったという話をし出す。それは、別の冒険者と協力してゴブリンの群れを撃退した時の話だった。ゴールデンアックス(ゲーム名)にある敵を誘導して落として倒す戦法や、ジャンプしてから出せる大技「下突き」(※ただし当てるのが難しい)を応用したというが、何ら役に立っているようには見えない。結局最後は山を切り崩して撃退したモノの、ゴールデンアックスの応用だと言い張るおじさんに、“たかふみ”は無理筋だと告げる。

が、なんだかんだと協力して迎撃した事に、他人を信用しないと思われたおじさんに“仲間”ができたのでは、と喜んだ“たかふみ”だったが、おじさんは2巻の最初で封印都市の結界を自分で破壊し自分で再構築するというアレな所業をしていた。協力した冒険者の一人がその“再構築”していたところを見たと告げ、結界を直したのに黙って立ち去ったり、ゴブリンの群れ撃退を助けてくれたりと、尊敬と感謝の意を述べようとしたところでおじさんは“記憶忘却”をかます。まぁ、自分が封印を破壊した事がバレるよりも安心ではあるのだが、人を信用しないおじさんの生き様も見て取れるなかなかに闇が深いシーンと言って良いだろう。さすがおじさん、闇が深すぎる。

2巻もYouTuberと異世界とSEGAへの愛が揺るぐことなく詰まっていた

今回のキモは、YouTuberとして生きようとする者の現実的なところや、いつも通りに酷いオチの異世界話、そして鉄板のSEGAネタ。相変わらず異世界モノとしては“異色”感を放っているし、それが2巻でも見事成功していると言っていいだろう。それに“藤宮”はヒロインポジションにいるのに、その過去はけしてカワイイものではなかったというのを露骨にだしていく姿勢、凄く好感が持てます。

上記で紹介した内容以外にも、エイリアンソルジャーを筆頭にしたSEGAネタが随所にちりばめられていたり、“藤宮”が中学時代の水着写真を“たかふみ”に送りつけて消されたり、メガネを外した“藤宮”がかわいかったり、驚異の毒はエロマンガ媚薬だったり、ぷよぷよネタをぶち込んできたりと読み応えもスゴイ。キーワードは「異世界」「ゲーム(SEGAがハードを出してた時代のモノ)」「YouTuber」、そして「SEGA」(SEGAが二回出たと思ってはいけない)。キーワードだけでは一体全体なんのツボを抑えているんだかさっぱりわからないだろうが、どれかしら引っかかるモノがあれば間違いなく買いだ。

なお、2巻では最後の最後で異世界からみた異世界、つまり日本を指して「日本の在りし処(ニホンバハマル)」を示唆するなど物語として着実に進んでいるのも見て取れる。そういった異世界との関係や、“たかふみ”と“藤宮”の関係、今後も期待され続けるSEGAネタなど、3巻にも大いなる期待をするしかない。そしてそのうち、メガドライブミニが発売されたらネタとして使われるのだろうと確信しながら、次巻を楽しみに待ちたく思う次第であります。……あ、メガドライブミニに“ランドストーカー”は収録確定です、おめでとうございます。