レビュー:「魔女は三百路から 1巻」現代まで生き続ける魔女が“お一人様”を極め、そして拗らせた素晴らしき日常記録

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魔女は三百路から 1巻

何故だか世間というヤツは、“友達がいるか否か”や“独身か否か”でその人となりを判断しようとするのですけれども。お一人様だっていいじゃない! 独り身で悪いかこんにゃろう! と思うわけであります。……え? そりゃ“独り身じゃなくなる”なら、それはそれでいいと言わざるを得ませんけど……。

お一人様を極めた魔女=痛々しくも、逞しい

「魔女は三百路から」の舞台は、今を生きる現代日本。そして主人公は、創立1907年の会社に“最初からいるっぽい空気”を醸し出す局様な存在のOLこと「黒川御影」。この「黒川御影」さんは、なぜか経歴を調べようとすると高熱にうなされるという噂持ち。そんな黒川さんの正体は17~18世紀にヨーロッパでおこなわれた“魔女狩り”から逃げ延びた末裔で、かつて“月影の魔女”と恐れられた女である。

御影さんのすごいところは2つ。まず一つ目は、魔女なだけに三百路(みおじ)だろうと“程よい”美人感を出しているところ。そう、例え300歳だろうと、この外見なら何ら問題ない。今一度いおう。僕なら“何ら、問題は、ない”。

そして二つ目は、独身を300年こじらせているので一人暮らしの要所要所が“痛々しくも逞しい”ところ。逞しさは、基本的には人類の敵である黒き生命体ことGに対し、有無を言わさぬ一撃で仕留めるあたりに集約されているし、“お一人様”だからこそだろう。その一方で、痛々しさは“お一人様ならどこか共感しかねない要素”を持ち合わせていると言って良い。……え、あるよね? 一人暮らしが長くなると、独り言も多くなるって共感せざるを得なかったのですけど……。

魔女の生き方はダークな“女性らしさ”

現代を生きる魔女は、御影さん以外にも数人いる。が、その独特な生き方が故に辞めていく魔女が多いという残念な状況になっている。その魔女の生き方というのは、“妬み”“嫉み”“ひがみ”を活力とし、世を呪い悪行を積み重ね、冒涜的生き方をするというモノ。……コレ、男性だろうと女性だろうと持ち合わせている要素だと思うけど、女性のドロドロとした感情あたりが凄くマッチングした結果なのだと思う。

特に、御影さんはどんないい男でもダメンズにしてしまうという、ダメンズメーカーだ。実に“魔女”らしいのだが、べつに“魔女”だからというわけではなく“お一人様”だからこそ男をダメにしてしまうという生々しさも持ち合わせている。これは、御影さんならではの“らしさ”というヤツなのだろう。

そして、実は魔女を辞める事ができる。どうやってやめるかというと、魔女として魔王と契約した際に人目につかない秘所へつけられる“魔王の印”を消すことが条件。魔女がゆえにダメンズにしてしまうのなら辞めるのも一つの手段であるというのに気づかないあたりに、御影さんは生粋の魔女である事を思わせてくれるのだ。

まさかの“転生”キャラや、使い魔とは思えない“猫”などおいしい属性持ちな脇役たち

そんなOL魔女を取り巻くキャラクターは、150年前に“月影の魔女”と恐れられていた御影さんとしのぎを削る戦いをした“はず”の高杉晋作の生まれ変わりな会社の後輩である小林悟くん。第1話の時点では、御影さんは自身の妄想彼氏と似過ぎていたがゆえに、完全なストーカー行為すら実行するくらい、御影さんが興味を持ち小林くんも“運命”が気になって仕方がないキャラだ。恋愛的な意味合いでは、今後キーマンになりそうとも言えるし、ある意味“被害者”でもある。

あとおいしいキャラは、御影さんの使い魔たる猫の“ノワール”。コイツが常に威嚇してくる。スゴイ。これだけで笑いが取れてる。例え、御影さんが欲望のまま“人間化”させたところで、威嚇する習性は一切かわらない。そんな“ノワール”がカワイイと思うのは、僕だけじゃないはずだ。“ノワール”はどこまでもブレないで、このまま威嚇し続けて欲しい。本当にそう願う。

他にも、魔女仲間の魔魅ちゃんと杏子さん、それに御影さんに魔女を辞めさせようと目論み高杉晋作を転生させた天使たちと、“お一人様”がテーマながらにちらほらと存在感があるキャラは多い。特に天使は、今後どう絡んでくるのかは気になるところでもある。……投げっぱなしにならないと良いなぁ。

読者は清く正しく“常識を持った”御影さんウォッチャーなのである

この漫画は、紛う事なき“お一人様で会社じゃ局様と認識されてしまうOL女性が300歳で色々と拗らせちゃってる魔女だったら?”というお話で間違いはない。そして、御影さんから見る“お一人様”の拗らせっぷりは半端なく、300年は伊達じゃないと思わせてくれる。例えば、恋に臆病になっている300歳として、リハビリのためにソシャゲを始めたら300万以上課金した挙げ句サービス終了が伝えられてしまうのだが、御影さんは「もっと貢がせてよ!?」と叫ぶ。何故かと言えば、相手を堕落させたいという魔女の血がそうさせるという事だが、こういった行動は“お一人様”だからこそ可能とも言えるモノだ。……いや、お一人様じゃないとほら、ご家庭とか色々大変じゃないですか……!

他にも、一人結婚式を挙げたり、人間化させたノワールに“御影さんが”乱暴に扱われた事へ冒涜的な快楽を感じたり、バスボムをジェームスと名付け一人芝居を始めたり。お一人様を拗らせた御影さんという存在に痛々しさを見ながらも、その裏にそこはかとない“生々しさ”がねじ込まれているような印象を受ける。その解釈でいけば、この漫画は“女性”ならではの生々しさを“魔女”でコーティングした日常コメディとも言えるのだ。女性の生々しい話はリアルだと“ご勘弁願いたい”と思ってしまうのだが、300歳の魔女がやらかす事だし、漫画はフィクションですから! と大手を振って言える。この痛々しさや生々しさは、「コメディがゆえに嫌いじゃない」と。

まぁ、何がいいたいかと言えば、“御影さんの拗らせっぷりは面白い”という一言に尽きる。読者たる僕らは、基本的に“常識を弁えているはず”の“御影さんウォッチャー”であり、そのギャップを楽しむのだ。あまりにも御影さんが拗らせすぎているがために、天使の目論んだ御影さんが今後高杉晋作の転生後である小林悟くんとの仲がどうなるのかも気になる一方で、どうせだから「このまま拗らせ続けて欲しい」とも思ってしまうモノ悲しさよ……。今後、御影さんがどれほど拗らせ続けるのか、生暖かい目で見守っておきたい。