レビュー:「聖女の魔力は万能です 1巻」漫画化したことで一段と魅力的な作品となった異世界もの

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聖女の魔力は万能です 1巻

異世界召喚もので女主人公かつ恋愛要素が入ると、ドロドロした内容になったり同じことを繰り返したり終始恋愛要素だらけになったりしがちだが、この漫画はそんなことはなく、主人公はしっかり自分の趣味と実益を備えたライフワークを過ごし、恋愛要素はまったりほんのり実っていく様が描かれている。何より絵柄が内容にあっていて、小説から漫画化したことで一段と魅力が引き出せた作品になったのではないだろうか。

聖女召喚の儀で強制呼び出し

舞台は主人公がいた日本とは全く違う、剣と魔法があり魔物も闊歩するファンタジーの異世界、スランタニア王国。その国から強制的に呼ばれた2人の女性の片方が主人公の小鳥遊聖だ。聖はごく普通のOLで、仕事を終え一人暮らししている家に帰ってきたところに魔法陣が浮かび上がり、召喚された。

聖女の魔力は万能です 1巻

召喚された2人(1巻:10ページより引用)

何の前触れも断りもなく異世界召喚なんてされたら、そりゃ戸惑うし驚くし何事が起きてるのかと思うよね。そしてそんな状況では、誰か説明しろやあぁぁぁぁ! と思うのも当たり前で。しかも現れた第一王子は自分には目もくれず、もう一人の女の子だけを連れて行ってしまった。放置された聖は怒りに沸いたが、沸いていいと思う。未来の王ともあろう上に立つ者が、周り見えなさすぎじゃないか?

王子が説明しないのなら適当な周りの人に聞くしかない。大雑把な説明を聞き元の世界には帰れないと知った聖は、それならこの世界に慣れることが必要だと考え始める。若いくせいになかなか落ち着いてるところ、順応性が高く、物怖じしない性格で、前向きなのにも好感が持てる。この境遇に悲観されたりうじうじされると、それを慰める男性との大恋愛話オンリーに突入しそうだが、この漫画はそんなことがない。そもそもこの主人公、まったく泣かないし。

余談だが、第一王子の問題行動はこれだけではなく、今後もちょこちょことポンコツ具合がお目見えする。正直、この国の行く末が心配でならない。

初めてのポーション作り

薬用植物研究所の所長から研究員になりたいかと問われ、趣味の薬草も知らないことも学べる機会だと、聖は研究員になる。主な仕事は薬草を使ってのポーション作りで、聖はここで初めて自分の魔力を使用する。

聖女の魔力は万能です 1巻

魔力ってどうやって注ぐの?(1巻:36ページより引用)

そんな驚かれても、知らないものは知らない。この世界では魔法は身近なものでも、日本では漫画やゲームの中でしか味わえないのだから。しかし魔力操作のコツを教わった聖は一発で魔力を感じることに成功し、初のポーション作りにも成功した。

しかし聖の作ったポーションは、通常のものと同じ材料と手順で作っているにもかかわらず、効果は数値にして5割ほど高いものになった。聖女たる力が発揮された最初の出来事になる。が、周りには聖女ということは内緒にしているので、まだバレてはいない。どうも主人公は一般人として生きていきたいらしいが、さて、いつまでバレずに過ごせるものだろうか?

団長を5割増しで助ける

呼び出されてから3ヶ月が経ち、聖の製薬レベルは20を超えた。20を超えると上級ポーションが作れるようになる。これも当然、効果5割増しだ。

ある時、魔物討伐に行っていた第三騎士団がサラマンダー(火を噴くコモドオオトカゲのような魔物)の被害にあい、幸い全員王宮に戻ったが、怪我人が多くポーションが足りないと緊急通達があった。そこで聖を含め研究員数名でポーションを持って王宮へ急ぐと、そこにはたくさんの怪我人が。その中でも一番重症を負っていたのが騎士団長だった。聖は団長に自作の5割増し上級ポーションを飲ませる。

聖女の魔力は万能です 1巻

ひどい火傷や怪我も綺麗に治る効果(1巻:75ページより引用)

聖のポーションのおかげで事なきを得た団長は、これ以降聖に好意を持ち始め、氷の騎士と呼ばれているにも関わらず、聖に対してはまったく凍っていないただの優しいイケメン男性となる。こんなイケメンなのに性格も擦れていないし女慣れもしていないような騎士様がいるだろうか。いない……とは言わないが、多くもないだろう。

5割増し香草料理

第三騎士団を助けた一件で王宮から特別報酬などをいただき、研究所の予算はかなり潤ったようだ。一番の功労者である聖の希望で、研究所にお風呂とキッチンが作られた。キッチンを作った目的は、スランタニア王国の料理が美味しくないからだ。異世界召喚ものではわりと多い設定ではあるが、衣食住の一つとして普通に食べられる物が欲しいのはよくわかる。そして出来れば美味しいものがいいのは当然だね。

聖は薬草を使って香りや味を付け料理を美味しく調理するが、この世界では薬草を料理に使うなど聞いたこともないようで驚愕された。そして聖の作った料理は、研究所メンバーにも第三騎士団の面々にも気に入られることになる。

聖女の魔力は万能です 1巻

団長も気に入る聖の料理(1巻:115ページより引用)

騎士達に食べさせたことから身体能力向上効果が料理に付くことが判明し、更にいろいろ実験した結果、聖が作ると謎の5割増し効果が料理にもつくことがわかった。聖女たる力が発揮された案件第2弾となったわけだ。

イケメン団長ホーク様との進展

聖がOLの時は残業続きで不健康な生活を送っていたが、この世界に来てから健康的な生活になり、目の下のクマが消え血色の悪かった肌も明るくなった。視力も良くなったおかげで眼鏡も外すことができ、どうもモテ期に突入したようだ。同じ研究員の爽やかイケメン君から褒められる。

聖女の魔力は万能です 1巻

この世界はイケメンだらけです(1巻:129ページより引用)

彼氏がいない歴=年齢な主人公は、そんな賛辞には慣れていない。団長、頑張らないと研究員に取られちゃうかもしれんよ? といらん心配をしてしまったが、団長は負けていなかった。

聖は研究所がお休みの日は王宮の図書室に通っているが、王宮までは片道で徒歩30分ほどかかる。王宮からの帰り、団長が馬で研究所まで送ってくれるようになったのだ。少しの時間でも一緒にいようとしないと、騎士と研究員なんて仕事であまり接点がないから親睦なんて深められない。これは良い作戦ですよ、ホーク団長!

聖女の魔力は万能です 1巻

横乗せです(1巻:140ページより引用)

馬に2人乗り、しかも足首まであるロングスカートとくれば、そりゃ横乗りになりますよね。しかも前にですよ。いわばイケメン団長の足の間に腰を据えるわけです。慣れていないとかなり照れる配置だということが、おわかりいただけるだろうか。密着度は高いし顔近いし腰に手当てられるしで、もう羞恥で緊張なんて吹っ飛ぶでしょうよ。いや、羞恥も緊張もむしろ増しますね。

更にホーク団長はお互いの休みの日に、一緒に街へ行かないかと誘う。聖は街には出たことがなかったため、喜んで受ける。これが主人公の人生で初のデートとなるわけだが、誘われた時点では初めての街への期待ばかりで理解など出来なかったようだ。このデート内容は次巻になるが、まったく凍ってない氷の騎士たるホーク団長が、どのようにして聖をエスコートするのか期待したい。

聖女の魔力は万能です 1
著者:
藤小豆
著者:
橘 由華
価格:
¥ 583
レビュー:
4.3/5
出版社:
KADOKAWA / メディアファクトリー
内容紹介:
どこにでもいる、ちょっと仕事中毒な20代OL・セイは、残業終わりに異世界召喚された。 …でも、急に喚びだした挙げ句、まさかの放置プレイ!? 暇を持て余した彼女が新たなライフワークに見つけたものは……。